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ウラジオストクLNG
ガスプロムがウラジオストクLNG事業をやめることを検討しはじめた!
報道によれば、ロシア国有企業ガスプロムの社長アレクセイ・ミレルは、十月十三日に、極東ウラジオストクに天然ガス液化工場を建設するという計画について「撤回の可能性を検討する」と語った。これは、東シベリアで産出する天然ガスを中国に輸出することを、価格面での折り合いを何とかつけて中国側と今年の五月に合意したガスプロムが、中国とのこの関係の強化を何にも増して優先する、という自己の意志をしめしたものといえる。
では、このことの内実はどうであるのか。
同じこの十三日に、ロシアを訪問している中国の李克強首相とメドベージェフ首相は、金融やエネルギーなど経済分野を中心にして約四十の協力文書に署名した。ロシア中央銀行と中国人民銀行(中央銀行)が自国の通貨危機のさいに、互いの通貨を融通しあう通貨交換(スワップ)協定を締結した、というのが、これの金融面をなす。このことは、欧米諸国からかけられている経済制裁のゆえに、資金の調達の困難と株価の下落にあえぐロシアの銀行や諸企業、そしてルーブルの下落にさらされているロシア国家を、中国がささえる、という意味をもつ。エネルギー面にかんしては、「ロシア石油最大手ロスネフチと中国石油天然気集団との関係を強化すること」を合意した、という報道を私は見ただけであって、このことの中身についてはつかんではいない。ただ、このことと先のウラジオストクLNG事業にかんすることがらを連関させて考えるならば、アジアのエネルギー市場への進出をめぐって、TNK-BPを吸収合併してロシア版メジャーにのしあがったロスネフチとガスプロムがしのぎをけずっている、ということがうかがえる。
これまでの経緯および現実的なことがらを考えるかぎり、東シベリア産の天然ガスを、パイプラインを敷設することをとおして中国に輸出することを、ガスプロムが中国石油天然気集団と合意し、その設備の建設を開始したことは、ウラジオストクLNG事業計画の撤回を検討する理由とはならない。この地で液化する天然ガスの主要な部分を東シベリア産のものとしたのでは、すでに輸送費がかかっていることに規定されてそのLNGはきわめて高価なものとなるからであり、当該の主要な部分をサハリン産のものとすることを、ガスプロムは計画していたからである。この企業は、サハリン1プロジェクトの天然ガスを譲り受けることを追求したのであったが、当該事業を主導するエクソンモービルは、その価格が不満であることを理由にして、その提案にのらなかった。そこで、ガスプロムは、自己が権益をもつサハリン3プロジェクトで生産する天然ガスをつかうことを計画したわけなのである。
考えられることは、次のことである。アジア諸国に輸出することを狙ってのロシアのLNG事業としては、ウラジオストクでのそれのほかに、ノバテックが主導するヤマル半島でのそれ、およびロスネフチとエクソンモービルが提携しての極東でのそれが計画されていたのであって、当該事業においてガスプロムが後二者に敗北した、ということが推測されるのである。ヤマルLNG事業の権益の二〇%をフランスのトタルに譲り渡してその八〇%を保有していたノバテックは、中国石油天然気集団とのあいだで、二〇%の権益を譲渡することを、すでに二〇一三年九月に合意している。欧米諸国からの経済制裁に規定されて、資金の調達がきわめて高いものにつくことにロシアの諸企業は苦しめられているのであり、種々の事業計画のねりなおしを迫られているのであるが、こうした状況のもとで、中国の諸企業から資金をよびこんでいた企業が優位にたった、ということが考えられるのである。ガスプロムは、調達しうる資金をもってするならば、ウラジオストクでの天然ガス液化事業の計画を断念して、東シベリアでの天然ガスの開発とそこから中国へのパイプラインの敷設に集中せざるをえなくなった、ということである。
欧米の帝国主義諸国によるロシアへの経済制裁は、国際的金融市場の網の目にしっかりとあみこまれているロシアのエネルギー諸独占体の首をじわじわとしめつけている、といわなければならない。また同時に、その経済制裁は、EU諸国の不況をますます深刻なものとすることとしてはねかえっているのである。
二〇一四年十月十七日
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