シェールオイル企業が倒産――経済的破局が始まった!

 アメリカのシェールオイル生産企業の倒産第一号がうみだされた。これは、リーマン・ショックをその深刻さにおいて凌駕する経済的破局が始まったことを意味する。
 次のようなことが報道された。
 テキサス州オースチンでシェールガス・オイルの開発・生産をてがけるWBHエナジーが、アメリカ連邦破産法一一条(日本の民事再生法に相当)の適用を、一月四日付でテキサス州の連邦破産裁判所に申請し、経営破綻した。原油価格の急速な下落のゆえに、生産コストの高いシェールガス・オイル生産企業の経営難が指摘されていたが、この下落が始まった昨夏以降に経営破綻したのは、これが初めてとみられる。負債総額は最大で五〇〇〇万ドル(約六〇億円)であり、現下の原油安のために、当初想定した売上高を確保できず、資金繰りが悪化した模様である。
 WBHエナジーは、北テキサスに二六〇〇エーカーのシェールガスとオイルの開発拠点を保有(資産規模は一〇〇〇万ドル)し、三七の井戸を掘ってガスとオイルを開発し生産していた。しかし、リース会社への支払い一二〇〇万ドルが滞ったことからして、昨年の九月ころからリースの打ち切りを求められていたという。同社は非上場企業である。――
 この企業の倒産は、シェール・バブルの崩壊が始まったことが誰の目にも明らかになった、という象徴的意味をもつ。と同時に重要なことは、この倒産のゆえに、この企業と取引していたリース会社や、この企業に何らかのかたちで資金を貸していた企業ないし金融機関や、そしてもしもこの企業が債券を発行していたとすればこれを買っていた法人ないし個人などが、支払い不能となった負債分だけの不良債権をかかえこむこととなった、ということである。こうした不良債権がこれらの諸企業や金融諸機関に死重となってのしかかるのである。
 シェールオイル生産諸企業は、総額三〇〇〇億ドルのジャンク債を発行していると同時に、さらに二五〇〇億ドル以上のレバレッジド・ローン(ハイリスク・ローン)をかかえており、この両者はともに証券化されている。シェールオイル生産諸企業の倒産や経営悪化は、こうした種々の債権が不良債権と化すことをもたらすのであり、金融諸機関やヘッジファンドなどの倒産へと連動していくことになるのである。すでに、原油先物の価格の暴落によって、この価格下落分だけの投機資金があとかたもなく消失した。そして、もろもろの投機家たちが、みずからがエネルギー関連諸企業の株式に投機していた資金をひきあげることをとおして、また原油価格暴落によってこうむった損失を手当てするために・手持ちの株式を売却することをとおして、株価は乱高下しながら下落しているのであって、この下落分に相当するだけの投機資金も消え去った。これらに、シェールオイル生産諸企業の倒産や経営悪化にもとづく、所有債権の不良債権化がくわわるのである。ジャンク債の投げ売りや、融資資金の返却の当該企業への強要は、事態をますます深刻なものとすることになる。
 二〇〇八年に約三〇〇基であったアメリカのシェールオイルのリグ(掘削装置)数が、二〇一四年の十月十日には一六〇九基にまで増加していたのであったが、その後の原油価格の暴落に規定されて、二〇一五年一月二日時点では一四八二基にまで減少した。多くの零細な諸企業が、ジャンク債やレバレッジド・ローンやまた原油先物の売却などによって資金を得ながら生産しており、生産を削減することはできず、自転車操業的に生産を続行する以外には生き延びる道はない、というシェールオイル産業の状況をかんがみるならば、リグ数のこの減少は、こうした諸企業のなかの一定の部分が、すでに運転資金を調達することさえもができずに生産続行不能におちいっていること、そしてまた、その数は少ないけれどもまだしも資金のある中規模ないし大規模の諸企業が、採算割れとなった井戸の採掘を停止して、相対的に優良な井戸に生産を集中していること、この両者が進行していることをしめしている。たとえ後者の諸企業であったとしても、一定の井戸の採掘停止にもとづく生産量の減少と原油価格の下落とは、当該企業の収入の急激な減少をもたらしているのであり、その企業のジャンク債やローンの一定の部分はもはや返済不能となっているのである。
 現存政府の金融緩和策の実施にたよりながら投機資金をあやつってきた諸企業や金融諸機関、それらがかかえるもろもろの債権の多くはすでに死んでいるのであり、このことが顕在化するのは時間の問題なのである。
                         二〇一五年一月一二日
 

 

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